「航空祭なら旅っくす」を目指す添乗員の航空祭リポート『百里基地航空祭2024編』~小松基地+築城基地=今年の百里基地航空祭~
いばらぎ空港ではなくて、あくまでも百里基地です
首都防空の重責を担う重要度と同じくアクセス難易度も高い百里基地
航空自衛隊百里基地は、首都防空の任務を担う非常に重要な基地ですが、首都圏 に近いせいなのか映画やドラマや漫画やアニメの舞台としてもよく登場する基地なので、一般の皆様にも知名度は高い基地だと思います。
茨城空港はご存じなくても百里基地なら知っているという方が結構いらっしゃるはずです。
そんな知名度抜群の百里基地ですが、アクセスの面ではとにかく行きづらい基地ランキングでは必ず上位にランクされる基地のひとつです。
マイカーなどではなく公共交通機関を利用してのアクセスの難しさで言えば「東の百里、西の新田原」と言えるほどの立地です。
それは2010年3月の茨城空港開港後も現在に至るまで変わらず、JR常磐線の石岡駅から定期便の時刻に合わせてシャトルバスが運行されてはいますが、小型のコミュニティーバスでの運行で航空祭の日程に合わせて来場するマニアの方々に対応できる状況ではありません。
その為弊社のツアーも初日は石岡駅⇒百里基地周辺⇒ホテルで貸切バスを運行して移動手段を確保しています。
百里基地の中に「くの字」と基地内から丸見えの「違憲の丘」の存在
新谷かおる先生の名作漫画「ファントム無頼」でも紹介された百里基地の中に存在する「くの字」は、旧帝国海軍の百里原基地から航空自衛隊百里基地への拡張工事の際に反対闘争の為に土地を確保できず、世界の航空基地の中でも特異な「くの字」に曲がって設置された平行誘導路が存在しています。
反対派の方たちはここを「百里平和記念公園」、又滑走路を挟んで向かい側の旧射爆場の山を「違憲の丘」としてして管理されていますが、自衛隊の存在に反対しながら基地をネタに商売をする方々と、自衛隊マニアなのに反対派に「反対活動協賛金」と言う場所代ともとれるお金を払って自衛隊機を撮影するマニア達の不思議な関係を目の当たりにできます。
航空祭前日の事
航空祭を基地の外から楽しめる百里基地航空祭の前日特別公開
百里基地航空祭では本番前日に周辺住民の希望者を抽選で招待しての特別公開が実施されます。
前日予行とは違って飛行展示のスケジュールなども公開されます。
航空祭第1日目と言ってもいい位の充実した内容が実施されます。
ですから弊社のツアーも東京駅7:15初発の特急「ときわ51号」で一路石岡駅を目指します。
石岡駅8:26到着後、貸切バスに乗り替えて茨城空港周辺に9:15着。
何とかF-15Jの機動飛行に間に合いました。
パイロットも観客も百里基地が小松基地に見えてしまう今年の百里基地航空祭
なんとも不思議なタイトルですが、これには深―い裏話があります。
皆さんもご存じの通り今年は航空自衛隊創設70周年記念の年です。
そして9月開催の小松基地以降、各基地飛行隊毎に記念塗装機が出現し始めていましたが、中でも最初の記念塗装機である小松基地の303SQと306SQの2機の特別塗装機は303SQが70年の喜寿をイメージした紫色に桜のデザイン、306SQが北陸新幹線W7系をイメージしたデザインと注目度も高く、航空祭での「背中」見せての機動飛行を楽しみにするマニアの皆さんも多かったはずです。
でも小松の航空祭前日に能登地方を襲った豪雨災害の被災者への配慮の為、機動飛行などの派手な演技は全て中止、単純な基地上空の航過飛行のみに規模を縮小しての開催に終わっていたのです。昨年までの百里基地なら小松基地の306SQのF-15Jが飛行展示を見せてくれていましたし、11月3日の入間航空祭では303SQの特別塗装機が地上展示機として参加していましたので、306SQの特別塗装機の来演をひそかに期待しているファンは多かったはずですが、特別公開前日の金曜日に小松から飛来したF-15Jは何と3機!
そのうち2機が303SQと306SQの特別塗装機との情報で両飛行隊の関係者も現地へ駆けつけるファンもみんなが同じ「2が月半遅れの小松のジベンジ!」の気持ちに統一されたと思います。
規模縮小の事情が事情だけに「不運」と思いあきらめていた小松の特別塗装機の「背中を記録」への思いは、百里基地上空での前日公開でリベンジを果たし、明日はもし何かの事情で中止になっても「このまま帰ってもいい!」と思える結果を残せました。(実際は欲が出て決して帰ることはできませんが)小松のF-15Jに負けられない地元3SQのF-2機動飛行とブルーインパルス
明日の本番当日とは3SQのAGG(射爆撃展示)とブルーインパルスの順番が入れ替わって、先に3SQ、最後がブルーインパルスの順番での飛行展示が実施されて前日の特別公開は終了しましたので、貸切バスに戻って石岡駅近くのホテルへ向かいました。
百里基地航空祭当日の事
朝5時前、まだ夜明け前の石岡駅前での耐久レースからスタート
今回宿泊したホテルは、JR石岡駅前から徒歩約20分の場所に位置する「ルートインホテル石岡」でした。
午前4時半までにはホテルを出発して百里基地行きシャトルバスの出る石岡駅を目指します。関東鉄道が毎年運行する石岡駅⇔百里基地のシャトルバスは朝6:00からの運行開始ですが、5時までに石岡駅前へ到着してシャトルバスの待機列に並ぶのがお勧めです。
なぜならば5:02に水戸駅からの上り初発電車が石岡駅へ到着するからで、前夜に石岡駅周辺にホテルを確保できなかった参加者が次善の地、水戸駅周辺のホテに宿泊してこの初発電車で石岡駅へやって来るからです。
そんな理由で、今年も4時にホテルロビー待機、4時30分にホテルを出発して4時50分にはシャトルバスの待機列の中の一人となって、寒さと闘いながら乗車までの時間を過ごしました。
百里基地の端っこに到着
2年前の航空祭では、シャトルバスは正門から入場してエプロン地区手前の手荷物検査場そばで降車した記憶がありましたが、今年のシャトルバスは北門から入場して滑走路の北端に近い所で降車してエプロン地区まで約500m程歩き、正門からの徒歩入場のルートと同じ手荷物検査場で検査を受けての会場入りとなりました。
それでも何とか北風によるR/W03離陸を想定してエプロン地区の北寄りに拠点を確保できました。
航空祭開始前に記念品を購入すべし
場所を確保できたら、両隣の「同好の方たち」に一声かけて、グッズショップのテントへ。
今回の航空祭にはおなじみのお店がどちらも権利を確保できずに不参加なのは残念ですけど、小松空港の「ハイレートクライム」さんが出店されているとの事なので、早速3SQの70周年記念ワッペンを購入できました。
確保したポイントに戻る前にエプロン地区で遭遇した百里基地のマスコット「百りん」&「百りんBLACK」と撮影もしておきました。
オープニングフライトで航空祭はスタートです!
午前8:00百里基地所属の3SQ、百里救難隊のF-2、UH-125A、T-4のオープニングフライトで航空祭が始まりました。
ここでの見所は3SQのF-2戦闘機6機編隊での航過飛行ですが、今年は他基地同様3SQでも70周年記念塗装機が用意され、それも単座A型と複座B型に各1機づつ2機施されて、6機編隊の中に2機とも参加していました。
F-15Jの機動飛行=百里基地が小松基地に変わった感動の25分間
前日の特別公開でのリポートの通り、今年の百里基地航空祭には、これを目的に参戦したマニアの方達も多いと思います。
「有ると思っていたモノが無い」ことのショックよりも「無いと思っていたモノが有る」喜びの方が何倍にもテンションを爆上げしてくれますよね。
306SQの「北陸新幹線」の離陸に続いた303SQの「喜寿桜」のハイレートクラムをファインダー越しに見た瞬間、そこは百里基地から2か月半前の小松基地に時空を越えてトリップしていました。
例え滑走路の向こう側に筑波山が見えていてもです。
マニアの皆さんも期待していたでしょうし、この日のF-15Jの機動飛行にかかわった小松基地と百里基地の航空自衛隊のすべての方々もこの飛行を見せたかったのだと思いますし、「ともにこえよう石川」をスローガンに地元の部隊から能登の皆さんへ元気を発信しようと企画された小松の航空祭が、前日の豪雨水害で不完全な形での発信となったことは、基地関係者の皆さんもきっと残念に思われていたこととわかる感動的な25分間をしっかり見せて頂き、築城基地航空祭での8SQのジオスさんの決め言葉「これが撮れたら今日はもう帰ってもいい」そんな記録も無事できました。
百里でしか見られない捜索救助デモ
感動的なF-15J機動飛行に続いて実施されたのが、地元百里救難隊による捜索救助デモですが、ここ百里救難隊ならではのデモが2つ見られます。
1つ目がU-125Aが要救助者を発見した後に、サバイバルキットの投下を実演してくれます。
赤いキット投下の瞬間をカメラで捉えられると水色の機体と青空の中に赤いキットが映えていい画像になります。
2つ目がUH-60Jからのパラシュートによる自由降下デモです。自衛隊唯一の第一空挺師団の使用する丸い形の落下傘ではなく、操縦性に優れた四角い落下傘でのピンポイント降下の実演が見られます。
午前中に実施されたブルーインパルスの曲技飛行でのプレゼント
前日は、最終種目で実施されたブルーインパルスの曲技飛行が、本番では午前中最後の種目として実施されました。
これにはいくつかの理由が存在するようですが、一つのは、午前中の方が基地のエプロン側が順光順光になる事と、もう一つは人気のブルーインパルスの曲技飛行を先に終了することで、基地からの退場客の分散化を図っての事等がよく言われる理由になっています。
そしてこの日は晴天での開催でしたので、もちろん第1区分で実施されましたのでブルーインパルスの12月限定演目ダブルデルタ・ダーティー・ローパスが見られます。
これは3機ずつが縦に三角形(デルタ隊形)を2個形成して、主脚を出した状態でスモークを出して会場正面から低空航過する種目で別名を「クリスマスツリー」と言われ、12月の航空祭におけるブルーインパルスからのクリスマスプレゼントとして紹介されます。
この他、青い大空いっぱいに2機で垂直にハートを描き、もう1機がハートを射抜く「バーティカル・キューピット」も見られましたが、残念ながら4番機のスモークが不調だったみたいで星を描くスタークロスは実施直前に隊長からキャンセルの指示が出て見る事はできませんでした。
当日のサプライズイベント!「E-2Cホークアイ」の主翼展開&収納実演
当日エプロン地区に地上展示されている早期警戒機E-2Cホークアイの主翼展開と収納の公開実演がサプライズで実施されました。
もともとは空母打撃群の艦隊防空用の艦載早期警戒機として開発された機体ですので、空母のエレベーターサイズや格納庫の天井高に合わせた設計で胴体甲部の尻上りや4枚もの垂直尾翼など独特なデザインをしていますが、左右1基ずつのエンジンを取り付けた長い主翼は、どうしても空母収容時には折りたたんでの格納が必要です。
その主翼の折りたたみ方がグラマン社製の機体は独自の方法でして、第2次世界大戦中に空母の限られたスペースに多数の艦載機を搭載する目的で開発されF-6FヘルキャットやTBFアベンジャーで実用化され特許も取得されている方法なのです。
エンジンと連動する動力式なのは勿論なのですが、主翼の付根部分やE-2Cですと左右のエンジンのすぐ外側で主翼を90度縦方向に捻ってから胴体に沿う形で後方に折りたたむ面白い方法です。
その様子が実際に目の前で見られるのはある意味貴重な機会でして、勿論現場で動画撮影での記録もできました。
「艦載機と言えばグラマン」と言われた名門グラマンもF-14以降の戦闘機受注競争には結果を出せず、ビジネスジェット部門をガルフストリーム社に売却したりしましたが、1994年にはノースロップ社との合併によりノースロップ・グラマン社となりました。
百里3SQが築城8SQに対抗心を見せたAGG(Air to Ground Gunnery)
AGGとは、Air to Ground Gunneryの略で対地射爆撃の意味で、戦闘機でありながら、対地や対艦攻撃能力を持つマルチロールファイターF-2ならではの飛行展示科目と言えます。
そのF-2が実戦配備されているのは、百里基地の3SQと福岡の築城基地の6SQと8SQの3飛行隊です。
その中で毎年航空祭の機動飛行でマニアを唸らせるのが築城基地の8SQ「ブラックパンサー」です。
なぜならば機動飛行を演出していたジオスさんがカメラマニア(鉄道写真メインだそうです)で、航空祭当日の機動飛行やAGGの実施時刻の太陽の位置などを計算して機体が一番美しく映る角度や高度で機体の機動を決定するほどの熱の入れようで、エプロン地区の最前列の場所取りなどの危険行為まで考慮していただき「タッチアンドーゴーは絶対に演目に入れない」テレコンなど一部のマニアしか所持していないような機材は不要などマニアの痒い所に手の届くと大好評で、又そのプログラムを官舎前にご自身直筆のイラスト付きで掲示してくれます。
これを私達は「ジオスさんからの今年の挑戦状」として毎回朝一番にチェックしています。
そのため「F-2の飛行を見るなら築城基地航空祭」が定説となっていましたが、結果として今年の百里の3SQは8SQの機動飛行やAGGを意識したようなプログラム構成で前回私の参戦した一昨年のAGGとは別モノに変わっていました。
基地の立地条件で実施高度の差はありましたが、尾翼の兜武者のマークを除いて、ファインダーの中を飛ぶF-2は築城基地所属機と思えるほどでした。
ただし、百里基地の場合は午後エプロン側が逆光となるのが残念ですが。
満足感に浸りながら、進路反転、帰途に就く
3SQのAGGが終了と同時に撮影機材を収納してシャトルバス乗り場へ移動を開始しました。
12月の航空祭は寒さとの戦いでもありますから、早めに駅へ戻り、駅前のコンビニで温かいコーヒーを飲みたい衝動に押されながら。
もう外来機をお見送りする力は残念ながら残っていませんでした。
乗り場では50分程並びましたが、無事JR石岡駅に到着して、駅前のコンビニで今日の撮影結果をチェックしながら、指定席を確保している特急ときわ号の改札入場時間までを過ごしました。
百里基地航空祭2024 Data
実施日時
2024年12月8日(日)8:30~14:00
来場者数
約65,000人
天候
晴 最高気温:11.5℃(14:00)最低気温:-1.3℃(24:00) 最大風速:5m
百里基地航空祭2024で撮影した航空機の写真
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